PACS選びは仕事の質を左右する

社会医療法人かりゆし会 ハートライフ病院様
放射線科 部長    高良 誠 先生
病院が電子カルテを導入することに併せてPACSを更新することになりました。システム選定にあたり、PACSそのものの性能・使用感はもとより、電子カルテやその他検査機器との接続実績、保守管理がきちんとされているか、他施設の評判などを特に重視しました。
それらを踏まえて選定した結果、PSP社のPACSに決定したのです。導入後、読影にかかる時間が劇的に短縮され、これまでいかに読影に無駄な時間を費やしていたかに気づかされました。今回のPACS選定の経緯と稼働による効果を報告します
導入の感想

放射線科 部長    高良 誠 先生

「最初のPACS導入」
当院では、2005年度に初めての PACS をMDCT、MRI、RI を対象に導入しました。選定にあたって各社のデモを見ましたが違いがよくわからず、業務が忙しいこともあり、ほとんど他人まかせにしていました。当初はこれでフィルムから解放されるということにただ満足していましたが、後に後悔することとなるのです。

「PACSスタート」
フィルム袋がなくなった、などの騒ぎに巻き込まれなくなり、dynamic study の時に感じていたフィルム枚数の増加に対する罪悪感から解放されたことなど、もちろん幸せな事も多かったですが、PACSそのものの性能にやや不満を感じていました。読み込み速度が遅く読影開始にしばしば待たされたり、当初から不具合があり改善に時間がかかった、あるいは最後まで直らなかったりしました。これは大手メーカーの作ったパッケージを購入した地元業者がカスタマイズする形のシステムであったため、プログラムの深いところに関わる問題に対処できない事が原因でした。自分としてはフィルム時代より格段に仕事がしやすいし、これは仕様だと思って慣れることにしました。ただ週数回、院外の読影医に応援にきてもらっている際、しばしば使い勝手の悪さを指摘されることはありました。そのうち2台目のMDCTが導入され、読影しなければならない件数が年々増加し、また過去のデータが蓄積されてくるにつれ、PACSの反応が遅くなったように感じられ、徐々にPACSに対するストレスが増していきました。

「PACS乗り換え」
2011年度より電子カルテを導入することとなり、それに併せてPACSの入れ替えを医局より申請(実は臨床の先生方も今のPACSには不満だったようです)、病院もこれを承認しました。PACSの選定には、まず電子カルテや機械のメーカー(超音波や内視鏡も含め)と接続実績があるかから入り、PACSそのものの性能、サポート体制、経費、自社製で完結した製品であるか、他施設の評判などを検討し、最終的にPSP社のPACSに決定しました。沖縄県ではPSP社のPACSを導入している施設は50と最も多く、評判もよかったですし、サポートセンターが県内にあることは離島県にはメリットが大きいです。実際の使い勝手もよく、直感的に操作できてあまり説明を必要としないほどでした。前回の失敗を踏まえ自社製製品にもこだわりました。また放射線学会等でPSP社製のPACSが多く紹介されていた事も評価を高くしました。

「新PACS稼働」
旧サーバーからのデータ移行は比較的スムーズに行われ、2011年1月より電子カルテと新PACSが稼働を開始しました。

これまでと比較し、表示が格段に速くなった
画像が軽いため、複数の検査を同期させて一斉にページングしてもさくさく動く
ビューアーに過去の検査が一覧になっており、モダリティも絞り込めるため、見たい過去画像が一発で表示できる。特に頻度の高い経過観察の読影で重宝する
マウスの右クリックに使用頻度の高い機能項目を割り振ることで、最小限度の動きで多くの操作がこなせる
ビューアー上でMPR,MIP等の画像処理ができる
スライス間隔が異なる画像同士を自動で近いスライスと連動させたり、FOVを合わせるなどの自動調整機能もうれしい
所見システムの方でも過去のレポート一覧が表示されており、見たい過去レポートが一瞬でわかり、過去レポートのコピー、ペーストも一発でできる
検索機能が速く類似症例を検索することが容易である


などなど、全部の機能を使いこなせていない気がしますが、これだけでも充分すぎるほど快適になりました。

「使用して半年」
一検査に費やす時間が短縮したため、その分他の事に時間がかけられるようになりました。たとえば以前は過去画像の読み出しに時間がかかったため、直近の検査のみを比較していましたが、今では複数の過去画像を参照するのにたいして手間はかからないので、比較に充分な時間が割けますし、外来から読影を催促されて足りないものを感じながらレポートを返していたのが、文献をあたる余裕が生まれました。テンポ良く仕事ができるので一日の読影時間が大幅に短縮でき、以前は夕方になると疲労感いっぱいだったのが、現在は元気を温存できています。読影マシーンと揶揄していた自分に、放射線科としての誇りと自信が出てきたと思います。

「最後に」
一日の読影件数が多い施設ほど、PACS・画像ビューアー・所見システムの性能が仕事の能率を決定づけます。仕事に余裕がなければ質の向上は望めません。現在のPACSに不満があれば、チャンスを逃さず乗り換えを検討することをお勧めします。

< 2013年取材 >