2023.09.06プレスリリース

検体測定室における、QRコードによるスマートフォンとの
データ連携の運用開始について ~第2報~

検体測定室連携協議会
アボット ダイアグノスティクス メディカル株式会社
PSP株式会社
自治医科大学

■ 要旨

薬局を中心に全国約2,000か所に設置されている検体測定室において、検体測定室連携協議会の支援の下、QRコードによるスマートフォンとの間の検査値情報のデータ連携を実現する「NOBORI」PHRアプリのアップデートが行われます。運用開始に当たり、検体測定室に設置されているPOC生化学分析装置のうち、アボットのアフィニオン2ならびにロシュ・ダイアグノスティックス株式会社のコバス b 101及びb 101 プラスにおいて、データ連携機能が実現されました。

PHRアプリ「NOBORI」は病院で発生する医療情報、画像データ、検診データ、マイナポータル連携、スマホに集約されるヘルスケアデータなどの統合管理が可能で、本連携により、さらに検体測定室で測定した血液検査の情報も一元的に管理できるようになります。健康診断で指摘された生活習慣の改善に努力した個人が、その成果を確認するために、検体測定室を訪れるといった利用拡大につながることも期待されます。

■ 背景・目的

潜在患者も含めたわが国の糖尿病人口は約1,000万人に達しており、その対策は急務となっています。また糖尿病や脂質異常症も含め、動脈硬化性疾患の高リスク者の早期発見と重症化予防については、2018年に脳卒中・循環器病対策基本法が定められ、大きな社会課題として認識されています。初期には自覚症状に乏しい生活習慣病の早期発見のためには血液検査が特に重要です。

このような中、比較的最近、技術革新により登場してきた微量血液検査装置を活用し、糖尿病や脂質異常症の早期発見につながる簡易スクリーニングを、薬局-医療機関間の地域医療連携として行っているのが検体測定室です。検体測定室では、指先の自己穿刺により得られる、ごく微量の血液からHbA1cやLDLコレステロール、トリグリセリド、HDLコレステロール等の値を測定し、生活習慣病相当が疑われれば連携医療機関を紹介しています。HbA1cとは、赤血球中のHb(ヘモグロビン)に糖分がどのくらい付着しているかを見たもので、過去1-2ヶ月の平均血糖値を反映する検査項目で糖尿病の早期発見に有用です。

本取り組みでは、街の薬局店頭に最新の医療機器を設置し、指先等から採取した全血を検体として使用し、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病の早期発見のためのスクリーニング検査の機会を提供すること、さらに、異常値が出た場合には連携医療機関へ受診勧奨を行うことにより、最終的には我が国の生活習慣病や動脈硬化性疾患全体を減らすことを目指しています。

近年、食事や運動などの生活習慣を改善し行動変容を促すしくみとして、PHRと呼ばれる、個人の活動量や体重などの健康指標をスマートフォンを用いて年余に渡り管理し健康増進につなげることができるスマートフォンアプリが普及してきました。このような中で、今回、検体測定室で得られる指先検査データをQRコードを用いてスマートフォンに取り込み、PHRとの間でデータ連携を実現するアプリ開発が進められました。

今回の開発では、アボットのアフィニオン2ならびにロシュ・ダイアグノスティックス株式会社のコバス b 101及びb 101 プラスと、PSP株式会社の開発するPHRアプリ「NOBORI」との間で、測定検査データのQRコード連携が実現しました。なおアフィニオン2においては、株式会社インテグリティ・ヘルスケアの開発するPHRアプリ「Smart One Health」との間で、また、コバスb 101及びb 101 プラスにおいては、 株式会社くすりの窓口のお薬手帳アプリ「EPARKお薬手帳」と株式会社メディエイドのPHRとの連携が可能なアプリ「からだパレット」との間で、測定データのQRコード連携を実現済です。

検体測定室連携協議会(執行委員長:矢作直也(自治医科大学内科学講座内分泌代謝学部門教授))では、セルフメディケーションの推進を目指し、全国の検体測定室の運営支援や精度管理を担うとともに、ホームページ等を通じた広報活動に取り組んでいます。

ORコード連携した血液検査の結果データのアプリへの連携イメージ

■ 今後の展望

内閣府が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(第3期)「統合型ヘルスケアシステムの構築」(PD:永井良三自治医科大学学長)の研究開発計画の中でもPHRと医療データベース間のデータ連携が検討されており、今後、検体測定室やQRコード連携の活用が期待されます。

■ 用語解説

1) 検体測定室とは
2014年3月31日、厚生労働省より臨床検査技師法に基づく告示の改正が公布され、自ら採取した検体について診療の用に供さない生化学的検査を行う施設が新たに認められることになりました。常勤の薬剤師・看護師・臨床検査技師・医師が運営責任者となるなどの要件を満たす施設が厚生労働省に届け出ることで認可され、薬局を中心に現在、開設が進められており、2023年7月現在、全国に1,931か所、設置されています。

2) QRコード連携とは
QRコード(マトリックス型二次元コード)は、ホームページのURL情報の伝達や電子チケット、電子決済などに活用が広がりつつありますが、検査データの伝達にも応用可能です。各指先検査装置からの結果表に表示されているQRコードをスマートフォン側で読み込むことで、アプリに測定結果を取り込むことができます。

3) POC生化学分析装置とは
POCT(Point of Care Testing)とは、「臨床現場即時検査」とも言い、被検者の傍らで医療従事者(医師や看護師等)自らが行う簡便な検査のことを指します。POC生化学分析装置とは、その中で薬局等における検体測定室にて実施可能な生化学検査項目(特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準(平成 19 年厚生労働省令第 157 号)第1条第1項各号に掲げる項目の範囲内)を測定できる装置を言います。

4) PHRアプリとは
PHRとは、Personal Health Record(パーソナルヘルスレコード)の略称で、個人の健康・医療・介護に関する情報をさしています。これらの情報を自分自身で管理するためのツールがPHRアプリになります。PHRアプリに保存したデータをご自身の同意の下、医療機関等とデータ共有することで、より適切な医療サービスを受ける機会が増えることにつながります。

お問い合わせ先

検体測定室連携協議会
〒101-0032
東京都千代田区岩本町一丁目-8-15
イトーピア岩本町一丁目ビル4階
TEL:03-5833-7045(代表)
Mail:info@yubisakiself.jp

アボット ダイアグノスティクス メディカル株式会社
広報部門
Mail:public_affairs_japan@abbott.com

PSP株式会社
新規事業開発部
Mail:market-dev_sec@psp.co.jp

自治医科大学 内科学講座 内分泌代謝学部門
教授 矢作 直也(やはぎ なおや)
〒329-0498
栃木県下野市薬師寺 3311-1
TEL:0285-58-7355
FAX:0285-44-8143
Mail:yahagi.naoya@jichi.ac.jp
URL:https://www.jichi.ac.jp/endc/

自治医科大学・大学事務部・研究支援課
〒101-0032
東京都千代田区岩本町一丁目-8-15
イトーピア岩本町一丁目ビル4階
TEL:0285-58-7550
FAX:0285-40-8303
Mail:shien@jichi.ac.jp
URL:https://www.jichi.ac.jp/